生活保護は国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに自立を助長する制度である。自立の助長には、経済的自立のほか、地域において自立した日常生活又は社会生活を営むことができるようにすることが含まれる。
しかし現実には、利用可能な福祉サービスを活用しても、居宅では日常生活を営むことが困難な状況にある場合、必要な支援を受けながら生活を送る場が十分に整備されてきたとは言えない。さまざまな生きづらさを抱え、かつ経済的に不利な生活困窮者・生活保護受給者にとっては、住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることは困難な社会であるのが実態である。
このような問題に対し、生活困窮者・生活保護受給者を支援する活動の中には、地域の中で住居を確保し、生活支援とあわせて提供し、福祉事務所や社会サービス、近隣社会と連携して、生活困窮者・生活保護受給者の地域居住を支えてきた長年の経験がある。それらは無料低額宿泊所や法的位置づけのない住居・施設という形態をとりながら、居住支援のセーフティネットとして機能してきた。
こうした地道な実践の上に、2018年(平成30年)に生活保護法が改正され、「日常生活支援住居施設」の制度が新設された。生活支援の一部分が〈制度〉になったことは、生活支援がナショナル・ミニマムとして社会的に認知され、評価されるようになったことの表れと言えよう。
一方で、この法改正で強化されたのは、無料低額宿泊所や法的位置づけのない施設という形態をとった「貧困ビジネス」に対する規制である。劣悪な住宅で、生活保護受給者の自立の助長に支障をもたらすおそれがあるにもかかわらず、不当な利益を得ることを目的とした事業者に対し、法的規制が必要なのは言うまでもない。
ただし、本来、生活支援は設備基準の枠組みに閉じ込められるものではない。法令による無料低額宿泊所の基準は遵守しながらも、新たな制度を梃子に、生活支援の質を高め、その価値を社会的に発信し、政策を提言していくために、事業者同士が協力していく必要がある。
これからの社会は、単身化や孤立化がすすみ、家族の援助を受けられないことを「標準」とするような政策転換が求められている。これまでの社会保障が暗黙に〈家族〉に期待してきた役割を直視し、その機能を社会的に創出することは、認知症の高齢者、引きこもり、児童虐待など、隣接する社会問題の〈解〉を出すことにも寄与しうるはずである。
生活保護法第30条に新たに加わった類型として、今後は社会福祉事業の体系の中で、また、住宅セーフティネットを含む居住支援全体の布置の中で、支援を必要とする幅広い当事者にとって有益な社会資源となるよう、ここに「全国日常生活支援住居施設協議会」(全日住協)を設立する。
2021年(令和3年)3月16日